2020年からの、新型コロナ流行によって、インフルエンザの流行が見られなくなっている。マスクや手洗いなどの感染防御に加え、3蜜を避ける行動がインフルエンザの感染の対策にもなっていたであろうことは容易に想像できる。
同じ呼吸器感染症である結核についてはどうだろう。
結核研究所の内村先生によると2014年から2018年の 年報による新登録数の年間の減少率は,全結核で5.6%であったのに対して、2020年の2月までの統計では12%の減少になっているという( https://www.jatahq.org/wp-content/uploads/2020/07/8c0371473c2ec40d2dfd2f81c08efb4f.pdf)
2017年からグラフは2021年までの結核の新規登録患者の月報(概要)から作図したものであるが、2020年、21年の結核新規登録患者数は2019年に比較すると減少しており、その減少幅はここ数年で最も下が
っている。これも新型コロナ対策が効果を示したのであろうか。
内村先生によると、二つの理由がかんがえられるという。1つ目は新型コロナ流行時の休校にともなう学校健診発見の減少で、2つ目が保健所業務負担増や緊急事態宣言および人々の活動自粛にともなう接触者健診未受診である。本来発見すべき患者を診断できていない可能性があるということだろう。またKomiyaら(1. Komiya K et al. J Infect. 2020;81(3):e24–5.)は高齢者の結核の再活性化は、短期的な感染対策では制御できないため、結核患者新規登録数の減少は、真の発生率の低下を反映したものではない可能性を指摘している。 つまり、新型コロナに対する感染対策が結核患者を減らすかどうかはまだ不明で、今のところは見かけ上の減少の可能性が高いということであろう。コロナ流行の陰に診断できていない結核患者がいるかもしれないということを意識しながら診療にあたる必要があるだろう
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