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90台女性 失神

執筆者の写真: Haranaga ShusakuHaranaga Shusaku

今年度最初の、研修医による研修医のためのケースカンファレンスが開催されました。

症例は90台の女性で、失神のエピソードでの救急受診でした。研修医からの最初の鑑別(例のごとく各自がミニホワイトボードへの書き込み)は心疾患、脳血管疾患に加え、PE、脱水、熱中症、VVR、薬剤性など様々なものが上がりました。

ER到着時のバイタルは血圧上昇(190/60台)以外は特に以上なく、意識レベルも、身体所見上も神経学的検査を含め優位所見なし。検査でも胸部X線写真で心拡大がある以外は、ECG、ABG、血液検査、頭部CTに至るまで以上所見はありませんでしたが、研修医の先生方からは不整脈や虚血、脳血管疾患は否定できず経過観察目的の入院という意見が多数を占めました。結果、翌朝に手が動かしづらい、しゃべりにくいとの訴えが出現。MRIではFLAIR像では左小脳の高信号、MRAでは左椎骨動脈の描出不良が明らかとなりました。

 ここで今回の症例のポイントの1つBPAS(Basi-parallel anatomical scanning)という画像診断方法。BPASとはheavy-T2WIによるCSF-hydrographyで、撮影後にネガポジ反転することで椎骨動脈~脳底動脈の血管の内腔ではなく外観の像をえられるとのことです(長畑他 日本医放会誌63:582-584)。更に椎骨動脈解離の場合動脈系の拡張が撮られられる可能性がある様です。本症例でもMRAでは描出されていなかった左の椎骨動脈の外観が明瞭に描出され、しかも拡張も確認され椎骨動脈解離に矛盾しない所見を呈していました。

 さて、こkじょで本症例のもう一つのポイントです。椎骨動脈解離といえば、頭痛、後頚部痛が有名ですが、本症例にように高齢の場合は頭痛が見られないことも多く、またよく知られている運動やストレッチなどのトリガーイベントもはっきりしない様です。また、失神が主訴となることも稀のようでした。

 プレゼンターからの研修医へのメッセージは、①失神で受診した人の診断がつかない場合は慎重な経過観察が必要、②高齢者の椎骨動脈解離は頭痛やトリガーイベントが明確が出ないことが多い。の2点でした。

 今年後最初のケースカンファレンスも学びの多いケースでのでだしとなりました。

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